今回はメカニック・アクションです。ルールを読んでいて感じたのですが,ゲームのルールを作るというのはコンピュータのプログラムを書くこととよく似ていますね(というかコンピュータゲームを作っている人にとってはどちらもまさに同じことなわけですが)。RPGはルールに抜けがあって例外が発生しても,クラッシュすることなくGMがなんとかしてくれます。でもエラー処理ばっかりしてるとGMは疲れます。僕はもう若くないので,できればあんまり疲れないRPGを遊びたいです。
操縦の再挑戦
戦闘中,操縦判定に失敗した場合,メカニックは操縦不能の危機に陥る。操縦者は運命を甘受するか,もう一度移動アクションを消費して再挑戦ができる。再挑戦のペナルティはなく,可能ならば条件を緩和(片手運転を諦めて両手で操作する,障害物を回避する代わりにメカニックを停止させる,など)してもよい。再挑戦に失敗したり,既に行動が残っていないなどの理由で再挑戦できなかった(しなかった)場合,メカニックは制御不能状態になる。
操作判定がどのようなときに必要なのかは3ページ後に書いてあります。「障害物の回避」に失敗しても即座には衝突しないというのはMODERNよりもゆるいルールですね。「メカニックを停止させる」のは,判定の説明がどこにも書いていないので,必ず成功するか失敗するかどちらかでしょう(判断不能。詳細は後述)。とりあえず,障害物回避以外の判定に失敗して,メカニックを停止させるという選択肢が取れない場合についてMODERNと比較しておきます。
- MH
- 特殊アクション→(失敗)→「操縦不能の危機」状態→移動アクションが残っていればそれを消費してアクションに再挑戦→(失敗)→「制御不能」状態→全ラウンドアクションを消費して立て直し→(失敗)→クラッシュ
- MODERN
- スタント技または衝突後の〈運転〉判定→(失敗)→「制御不能」状態→フリーアクションで〈運転〉判定→(失敗)→スピンまたは(10以上の差なら)横転
最終的にはクラッシュしか選択肢がないので,そうなりにくいように判定の機会を増やしてあるのでしょうか。スピンですませてくれれば済む話なんですけどね。
メカニックの移動速度
移動速度の変更は,メカニックの操縦と同時に宣言する。メカニックは,そのラウンドは宣言した移動速度の範囲内でしか移動できない。
特に断りのない限り,すべてのメカニックは1回の操縦で最大の移動速度に達することができ,また最大の移動速度から1回の操縦で移動速度0まで減速することができる。
「範囲内」ということは範囲を宣言するのでしょうか。だとするとその範囲になにかしらの具体的な制限がないと,宣言する意味がありません。あるいは,ある一定値を宣言するのでしょうか。だとすると特殊アクションに失敗したあと「メカニックを停止させる」のは不可能ということになります。
MODERNでは停止を含めて5段階の速度が設定されており,毎ラウンド1段階しか速度を変更できません。ただし「急加速」「急ブレーキ」というアクションが用意されており,それを使えば2あるいは3段階変更することが可能です。
メカニックの操縦者
操縦者が意識不明に陥るなどして操縦できない場合,メカニックは自動的に操縦者以外からの命令を受け入れる状態になる。(中略)ラウンドの終了時までに誰もメカニックを操作しなかった場合,メカニックは制御不能状態になる。
こうした状況についての言及はMODERNにはないので,よい目の付け所だと思います(追記:Homepage | Wizards Corporateにありました)。ただし,1ラウンドが経過するまでに,としておかないと,操縦者のイニシアチブが遅かったらあっというまに制御不能になります。
制御不能状態
上記のように微妙な差異はあるものの処理自体はMODERNとほぼ同じです。クラッシュ時のダメージはMODERNの場合搭乗者については若干小さくなっています。また,ダメージ半減のための反応DC難易度が,メタルヘッドでは20なのに対してMODERNでは15となっています。
速度 | MH(メカニックおよび乗員) | MODERN(乗り物) | MODERN(搭乗者) |
---|---|---|---|
1〜19 | 1d10 | 2d6 | 2d4 |
20 | 2d10 | 2d6 | 2d4 |
20〜39 | 2d10 | 4d6 | 4d4 |
40〜50 | 3d10 | 4d6 | 4d4 |
51〜59 | 3d10 | 8d6 | 8d4 |
60〜79 | 4d10 | 8d6 | 8d4 |
80〜99 | 5d10 | 8d6 | 8d4 |
100〜150 | 6d10 | 8d6 | 8d4 |
151〜 | 6d10 | 16d6 | 16d4 |
制御不能からの立て直し/脱出
メタルヘッドでは,制御不能状態が1ラウンド続くので,その間に脱出可能です。また脱出できない状況であれば,移動アクションを費やして耐ショック姿勢をとることで反応セーヴDCを下げられます。キャラクターが死ににくくなるルールは大歓迎です。ただ,どこかのd20サプリに「制御不能状態の乗り物から脱出する特技」とかがあったりするとそれが無駄になるんじゃないかと心配です。
メカニックへの乗降
メカニックのタイプで乗降にかかる時間を分類しているのはわかりやすくてよいと思いますし,操縦技能判定で時間を短縮できるのもD&Dの〈騎乗〉技能に似ていてなじみやすいです。移動中のメカニックに飛び乗ることもできますし,メタルヘッドにだっていいところはちゃんとあるんですね。うんうん。
サイバーリンク・システム
MODERNでは残念ながら,兵装までも同時にコントロールできるような(というかアクションの回数を際限なく増やすような)強力なインターフェイスは用意されていないようです。d20サイバースケープの「車両制御ジャック」は操縦判定にプラス修正がつくだけですし,d20 FutureのCrackerjack Neural Linkもイニシアチブ向上と操縦中の特技使用可能という効果しかありません。
搭載兵器やアクセサリーにリンクすることにより,リンクしているものすべてを同じアクションで射撃/使用できる(最大で端子の数まで)。
(中略)
リンクする対象はフリー・アクションで切り替えることができる。「操縦システム」はそれだけで1つのリンク対象として数える。
複数同時リンクできるなら,「対象を切り替える」必要なんてないのでは?
メカニックのAC
誰もがローカルルールを考えたであろう「移動速度による修正」は採用されていません。MODERNでは速度に応じて最大+4の修正が加わります。
細部命中箇所の決定
はい,これもメタルヘッドの特徴のひとつですね。D&Dでも船舶なんかだと適当な大きさのブロックごとにhpが設定されていたりするので,ありといえばありでしょう。ただ,一貫性という観点からするとこれは好ましくないのですよね。巨大ロボットとか宇宙船とかどうするんだって話です。そういうものもd10で命中箇所を決めるとすると,じゃあなんで人間は命中箇所が設定されていないの? って話になります。そして旧メタルヘッドでは人間も命中箇所が設定されていたので辻褄が合っていたわけで。これはd20をプラットフォームに選択した時点で思い切って捨てるべきルールではないかなあ。
どうしてもということなら,せめて構造的に一体化している部分(プラントと貨物)は個別にダメージが行かないようにするべきと考えます。兵装やドライブについては武器破壊ルールを適用,火器を使うなら《遠隔武器破壊》特技で個別に破壊可能,とすればよいのでは。わざわざ余分にダイスを振る手間をかける価値があるルールかどうか,正直微妙です。
あと爆発物などの範囲攻撃でも命中箇所表で振っちゃっていいのかな? でないとグレネードロケット弾2発で丸裸なんですけど。
MVが0になっちゃったらルール上次のラウンドで自動停止しちゃうんですけどその場合クラッシュはしないということでいいのかしら。
装甲DRの適用
装甲がDRを付加するというのはd20とはあまりなじまないのですよね。他サプリとの互換性のためにもこれは廃止したほうがいいように思います。「ダメージ種別:レーザー」とかも。べつにメタルヘッド・エクストリームでやるぶんにはかまわないのですけど。
上面装甲DR
上面装甲が薄いのは構造上しかたがないわけではなくて,単に必要性がデメリットを上回らないからでしょう。MADシステムと銘打つからにはそのへんのバランス設定の自由度をキャラクターに与えるべきではないでしょうか。CSが兵器としての地位を確立しつつあるのであれば,それに対応すべく機動性を犠牲にして上面装甲を厚くした車両があってもいいと思います。そういう判断の材料が十分に与えられているのがよいルールだという[id:LIST:20080320]には大賛成です。
トップアタック
高所にいるだけで命中判定に+4は大きすぎる,というのがふつうのd20プレイヤーの感覚だと思います。
兵装・貨物の破壊
d20には厚さごとのhp表ってのがあってですね…まあいいや。
操縦オプション
操縦判定難易度は,MODERNでは絶対速度によって変化しますが,メタルヘッドでは最大MVに対する割合で変わります。
全速移動
全速移動では,移動速度が最大MVの2倍までになるが,直線的な移動しかできない。
ふつうの移動ではどれくらい直線的でない移動ができるのか,どこにも記述がありません。MODERNでは速度に応じて旋回半径(ではないですが似たようなもの)が設定されていたり,車線変更,スピンターンなどについても明記されています。
ドライブバイシューティング
メタルヘッドでは操縦者のみが攻撃ペナルティを受けるようですが,MODERNでは,操縦者に限らず,移動する乗り物から攻撃する際には速度に応じたペナルティがかかります。
回避的操縦
MODERNでは操縦判定不要で回避ボーナスも+2固定です。というか達成値によって回避ボーナスが上がるってことはそれだけ激しい機動をしているわけで,攻撃ペナルティもそれに応じて上がらないとおかしい気がします。
攻撃の支援
なにをどうやっても乗車中のほうが平地に立っているときよりも攻撃が当たりやすいなんてことはないのでは。
センサー支援
技能判定達成値10ごとに+1の状況ボーナスというのは,特技もとらずにできる行動としては強力すぎるように思えます。というかこの達成値○ごとに,って基本的に対抗判定以外ではやらない計算では…。
間接砲撃
ミサイル,ロケットなどの誘導兵器は,対象を目視できなくても,座標を指定したり,赤外線パターンを指定することでも攻撃することができる。(中略)レーダーが対象を捉えている場合,間接砲撃のペナルティは−2に軽減される。
で,レーダーポッドの説明には
探知したメカニックに対しては間接砲撃が可能で,ミサイルによる攻撃ロールに+5の状況ボーナスを得る。
とか書いてあるわけですよ。えーえー修正ぜんぶ足せばいいんでしょ。
泣ける。
メカニックの反応セーヴ
メタルヘッドは「メカニック修正」というひとつの値がイニシアチブ,AC,操縦判定,反応セーヴに適用されます。それに対してMODERNでは「イニシアチブ」「機動性」「防御」がそれぞれイニシアチブ,操縦判定,ACに適用されます。反応セーヴは乗り物では変化しません。メタルヘッドで反応セーヴが簡単に上がるのもどうかと思いますが,MODERNでイニシアチブと機動性が分かれているのもあまり意味がない気がします(イニシアチブと機動性の差は大きくてもせいぜい2くらいです)。
飛行と高度変更
MODERNは空中戦等はサポートしないので比べようがないのですが。
墜落した場合,1d100+直前の高度に等しいダメージをメカニックと全乗員が受ける。
CS乗りが長生きできないわけです。ところで落下のダメージはふつうは1d6/10フィートなわけですが。
おわりに
id:LISTさんのお気持ちはよくわかります。でも旧版に手を入れるよりd20 MODERN+Future+Cyberscape+Ultramodern Firearms+Military Vehiclesで再現したほうが楽しいと思いますきっと。メカニックデータだけホビージャパンに持ち込んで1,500円ぐらいで売ってもらうというのはどうでしょう。PDF無料配布でもいいかも。d20モダン販促ツールとして。