セレニカ~グラントリ (UCI/2.HC)

最難関となるクイーンステージはブロークンランド

d20っぽくないメタルヘッド(戦闘編 その2)

d20システムは(最近は他もそうだと推測しますが)高い一貫性を持ったルールです。しばらく遊んでいれば,だいたいこういう状況ではこういう判定で修正はこんなもんだな,という感覚が身についてきます。しかしメタルヘッドはその一貫性に反している部分が多々見受けられます。そういうものだと割り切って遊ぶのもそれはそれでいいと思いますが,僕はそういう「筋の悪さ」に黙っていられないのでこんな日記を書いています。

両手で武器を使う

《両手利き》(VI類武器)《二丁拳銃》(I類武器)の特技は,利き手のペナルティを2,利き手でない手のペナルティを6軽減する。

特技の説明の部分では明記されていませんが,わざわざ2種類用意されているところを見ると近接武器と小火器では両手で使うための特技が異なるようです。しかもI類(ハンドガン)限定。なんとなくメタルヘッドっぽくないですね。MODERNではSMGが中型,ライフルが大型の武器なので,《二刀流》特技で両脇にイングラムを一丁ずつ抱えて−4のペナルティで心置きなく撃ちまくれます。

待機アクションの“待ち合い”

敵味方ともが,互いに相手の行動をトリガーとして待機を始めた場合,GMは適当と考えるラウンドを経過させた時点で,新たなラウンドの頭に,両者に意志セーヴを行わせ,結果が低いほうはそのラウンドで回ってくる自らのターンで,待機アクションに指定している行動を,トリガーの条件が満たされなくても実行してしまうことにしてもよい。

選択ルールなので無視してもよかったのですが。これはあれですね,早撃ち対決をどう解決するかということですね。先に動いたほうが必ず負けるではないかと。まあ気持ちはわかりますが,セーヴによる対抗判定というのはd20では聞いたことがありません。【敏捷力】あるいは〈真意看破〉〈はったり〉あたりでの対抗判定が自然ではないでしょうか。

メカと近接戦闘

メカには,通常の近接武器ではダメージを与えられない。対物効果が○になっている武器は効果がある。

旧版から持ち越したルールです。ですが僕としては,近接武器でメカにダメージを与えられるからといって,メタルヘッドらしさが失われるとはまったく思えません。ものすごい強化サイボーグがそのへんの街灯を引っこ抜いてクルマをスクラップにしたりとかそういうことはできてもいいんじゃないでしょうか。
これと関連して,本家d20 MODERNののほうでは,「重機関銃ごときで戦車が壊れるとかおかしくね?」という質問に対する回答がHomepage | Wizards Corporateに載っています。

通常の射撃の種類

メタルヘッドでは,攻撃の結果とダメージを1つのダイスで決めていたので,バースト射撃の「複数回ロールしてベストな結果を採用」によってダメージの(期待値ではなく,当たったときのダメージそのものの)向上が望めたわけですが,d20版では攻撃ロールのみ2回できることになりました。つまりダメージ自体はそんなに伸びない。で,これをなんとかしようとして《射撃強打》なる奇天烈な特技が導入されたのではないでしょうか。まあこれはこれでいいかと思わなくもないですが,MODERNにもバースト(=《二連射》)とオート(=《バースト射撃》)があるのだから,d20を名乗る以上はそちらにしておいてもよかったんじゃないかなあ,と思います。
というか,別の機会に書こうと思っていたのですが,特技や技能をd20標準と変えてしまうということは,星の数ほどあるd20用サプリメントを流用するときにいちいちそれらのコンバートが必要になるっていうことなんですよね。そういうことに思い至る人がスタッフの中に1人もいなかったんでしょう。不幸なことです。

オート射で同じ目標を狙う場合,攻撃ロールへの修正が1射ごとに−2ペナルティがつく。
射界内で違う目標を狙う場合,攻撃ロールに,異目標1ごとに−3,1射追加ごとに−2の修正がつく。

正直これはかなりめんどくさいです。これに相当するMODERNの《バースト射撃》は,複数目標は狙えないものの,攻撃ロール−4でダメージダイス+2個ときわめてシンプル。なお表記からおわかりのように,特技がないとバーストできません。バウンサー優遇という意味ではMODERNのルールも悪くない気がしますけどね。

制圧射撃と散弾

MODERNの全自動射撃に相当するのがこれ。敵に反応セーヴを強いるところは同じなのですが,セーヴに成功しても移動アクションを,失敗したら標準アクションを失う,おまけに重機関銃なんかだと効果範囲がコーン(MODERNは10x10固定)というのがあまりにも強力。しかもこの効果,1ラウンドに1回しか受けないとはどこにも書いていないのです。
まあいわゆる「制圧射撃」を再現したいのはわかるのですが,すでに敵のいるところに撃ち込むんじゃ制圧射撃とは言えないですよね。Ultramodern Firearms D20にはSupressive Fireという特技がありますのでそれを使うとよいかもしれません。攻撃の目標のいた1マスか10x10範囲(全自動射撃時)を次のターンまで機会攻撃範囲にするというものです(機会攻撃には5発必要)。特技なしでやるとすると,全ラウンドアクション,20発消費で1ラウンド制圧効果,コーンなら反応セーヴDC10,直線ならDC15,とかそんな感じですかね。
あと

制圧射撃の間は,移動はできない。

標準アクションなんだからあたりまえですよね。というかふつうにヘタクソな日本語が多すぎて疲れます。D&Dの翻訳のほうがよっぽどうまいっていうのは喜ぶべきなんですかね?

MHd20でのクリティカルとジャム

なんでしょうね。これがないとメタルヘッドじゃない,みたいなものすごい思い込みをしている人が作者の周りには多いんでしょうか(本人を含めて)。無機物にもクリティカルとか勘弁していただきたいですほんとに。銃器もどんだけ信頼性低いんだと。まあでもあの恐ろしいクリティカル表とアクシデント表がなくなっただけでもよしとすべきなのでしょう。
(追記:d20 Resources - Mecha - Mecha Critical Hitsによると,ロボットにクリティカルした場合,操縦者はクリティカルダメージのかわりにクリティカル表から結果を選ぶこともできます。よりフィクションっぽさを求めるのであればこういう表もアリなのでしょうね。「爆発炎上」とかそういうひどい効果でさえなければ)
火器の攻撃だと攻撃ロールの回数が多いから,プレイアビリティを下げないためにもクリティカル・ロールの省略はやむなしだと判断したのでしょうが,MODERNではそもそも攻撃ロールの回数ではなく,ダメージダイスが増えるようにデザインされています。もっとも,これについても「連射したからって貫通力が増すのはおかしくね?」という反論ができますが,そこはまあ連射を食らって一瞬姿勢が崩れて効果的な防御ができなくなったとか,たまたま着弾点が重なったとかそんな感じで。

ジャムの解消は,その武器の関する特技を持っている場合,通常は1回の全ラウンド・アクションである。

「その武器の関する特技(原文ママ)」とは具体的になんなのかとか,「通常は」ということは特殊なケースとしてどんな場合があるのかとか,特技を持っていなかったらとか,そういうことにまったく触れていないあたり,21世紀の商業RPGとしては完成度が低いと言わざるを得ません。

武器の効果について

◎○△×の分類は,まあこれもメタルヘッドの伝統なわけですが,いったいどういうデザイン意図があるのか今となってはまったくわかりません。一時期は「強力すぎる火器は人間に当たっても貫通するだけで威力が発揮できない」とかそういうことかと思っていましたが,実際には重機関銃で人間を撃てば簡単に真っ二つにできるみたいですし。そのへん説明のできるかた,あるいは同様のルールを採用したシステムをご存知のかたはトラックバックいただけると助かります。
あとは男のロマン,レーザーですが,こちらもd20 Futureなんかでは特別扱いされることもなく,普通の銃と似たような威力に落ち着いています。レーザーならではのメリットは,強いていえば弾倉の容量が大きいことぐらいでしょうか。そのかわり[火]ダメージなので物体へのダメージ半減ですが。d20準拠でメタルヘッドのレーザー的な貫通力を持つものとなると,重力波ライフルとかそういうレベルになってしまいます。うーん,リアルってつまらない。

ひとこと

このゲーム,きっと旧版なみには遊べると思います。でも,d20サプリとして当然満たすであろう水準にまったく届いていないのが悲しいのです。