セレニカ~グラントリ (UCI/2.HC)

最難関となるクイーンステージはブロークンランド

「君の名は。」はゲームなら名作だった(あるいはエロゲ脳の恐怖)

映画館を出て家までの道すがら,なにを書こうかと考えていたのですが,言いたいことはだいたい言われていましたw

秒速まではとにかく辛気臭い主人公があーなんかこれ最近のアニメで見たなーみたいなギミックを振り回しながら(または振り回されながら)うだうだする話で,まあ観る人は選びますけど一本筋の通った作品ばかりでした。しかし星を追う〜で「え,ちょっと,なにがやりたかったの?」と困惑させられて,言の葉はタイミングを逸して見てないのですが,今回は健全な主人公2人と超おいしい二大古典ギミックを持ってきて,どんなワクワクが待ってるのかと楽しみにしていたのに,ぜんぜん引き込まれなかったのです。

おかしいところは無数にある。超常現象にはほとんど説明がなく、ご都合で勝手に決めてるルールや法則らしきものもろくに提示されない。何もかもデタラメなんだけど、新海先生は2人の心情に寄り添うだけであとは知らん顔、イヤー不思議なお話ですねーで押し切っている。我々が2人を好きになっていさえすれば、少なくとも映画を観ている間はあんまり話の穴が気にならないように表層のガチャガチャで「誤魔化して」いる。たとえば途絶えた入れ替わりが、なぜ口噛み酒を飲めば復活するのか、なぜ彼が復活すると確信したのかは、よく判らない。判らないが、ババアの適当な言葉や少年の若さやスピード感で、なんとなく雰囲気で押し通している。これはベストではないにせよ、新海先生のやり方としては正解だと思うのだ。こんな不思議だらけの映画、説明したら2時間かかる。

2016-08-28

まあそうなんですけど,そこをなんとかしてもらわないと僕の中では名作認定されないのですよね。といってもべつに説明が足りていないこと自体が悪いのではありません。僕が面白いなあと感じる作品というのは,(1) 観る人の感情をうまくコントロールできて (2) 展開をある程度予感させてくれる,または (2-b) 予感すらできなかった展開でも振り返ると納得感があるという条件を満たしていることが多いのですが,この映画はどうもそのへんがうまくできているようには思えないのです。まずは (1) として,瀧と三葉がお互いを好きになって会いたいと強く思うようになる,そして観客はそれを見ながらそうだよね好きになっちゃうよね会いたいよねと胸ときめかせ身悶えする,というところに持っていってほしかったのですが,まあたしかに2人とも魅力的な高校生ではあるものの,お互いの存在が大きくなっていくのを感じさせるような演出ってあったかしら? と。先輩とのデートだって先輩の深読みが当たっていたようにはさっぱり見えず単に女の子それも憧れの人と初デートでキョドってるようにしか思えませんでしたし,東京に会いに行ったのも唐突感しかないというか,電話すらしたことないのになんでいきなり!? というのが正直なところです。

(2) についても,とにかく展開を予感させるような要素が乏しくて,肝心のタイムギャップにしたところでそれを匂わせるようなカットってあったかしら? ですし(瀧のほうでは夜空に彗星が見えていなかったらしいのですが,東京だしそんなもんかな,としか…),三葉が父親を説得すると言い出したときも,勝算はおろか負ける確信すら持てないといいますか,なんか微妙にこじれてるぐらいの描写しかなかったのになんで作戦の成否がそこで分かれるようなことになってんだ…と。とにかく万事が万事この調子といいますか,こっちはもう「男女入れ替わり!」という時点でヒーローとヒロインの身悶えするようなすれ違いと恋を期待していたし,「実は彼女は○○の人だったんだよ!」「な,なんだってー!」「そう言われてみれば思い当たるフシが…!」というのを楽しみにして,準備オッケーよいつでもいらっしゃい,てな気持ちだったのですが,演出がことごとく外していて終始どうしてくれるんだこの欲求不満! という気分でした。

持ち時間は2時間しかないのに,こちらの気持ちとストーリーを駆動するために時間をぜんぜん有効に使えていない。それを「新海作品だからこんなもの」で片付けるのはちょっと違うよねというか,秒速ではエンディングまでにはきっちりヘタレ主人公に共感できるようになっていましたし,やっぱり監督にも得手不得手があって,今作はちょっと向いてなかった,勉強が足りなかった,ということではないでしょうか。

で思ったんですが,時間を無駄遣いしたいのであれば,ピッタリのメディアがあるんですよね。いわゆるノベルゲー。

  • 初手から入れ替わっているというのはいい演出でしたので採用です。
  • 入れ替わり先で四苦八苦する描写はたっぷり入れます(もちろんPC版では異性の身体への興味を抑えきれなくなるシーンも)。
  • 気の置けない友人たち,家族の微妙な事情についてもしっかり描写しておきます。
  • てっしーが三葉にも惚れているという描写も忘れずに。
  • 直接合うことのない2人が惹かれ合っていくエピソードをこれでもかと重ねます。机を蹴っ飛ばして同級生を威嚇するとか職場の先輩との恋を応援するとか父親との軋轢を解消に向かわせるとかそういうわかりやすいのでいいです。
  • 先輩とのデートは三葉の綿密なアドバイスで成功するのですが帰り際に映画と同じ台詞を言われます。
  • 会いたいなあという気持ちがふくらんでくるのですがやがて暮らす時代が違うらしいことに(あの手この手で先延ばしにしたあとで)気付いてしまいます。
  • このへんで宮水の一族の特殊能力について匂わせる発言があります。
  • 瀧は3年後の三葉に会いに行く決心をするのですがWikipediaで糸守町の真実を知ります。いまいち盛り上がらないけどしょうがない。
  • ここで最初のエンディング(または2回めのオープニング)。
  • 3年後。あれから入れ替わりは発生していません。
  • 大学生になっても三葉を忘れられない瀧は糸守町について調べるうちにあるルポルタージュを見つけます。
  • それによると町はこれまでも2度隕石の直撃を受けながら死傷者を多く出さずにすんでいる,そしてその秘密は宮水神社にあるのではないか,と。

とかとか,まあどっかで見たことのある話のような気もしますが,そう悪いものにはならないような気がしません?

#先輩ルートとか四葉ルートはあるのだろうか…。