セレニカ~グラントリ (UCI/2.HC)

最難関となるクイーンステージはブロークンランド

進化しない車輪

前回(id:kamenoi:20080316)の日記が情報量ゼロなので,もうちょっと詳しく愚痴っておきます。

メタルヘッドはどんなゲームか

実を言うと僕はメタルヘッドをそれほどヘビーにやりこんだわけではありません。学生時代にサークルで半期のキャンペーンを2,3回と単発セッションを何回か,といった程度です。でも遊んでいる間はとっても楽しかった。思い出が美化されることを差し引いても。

メタルヘッドのなにが楽しかったかというと,なんといっても「ぼくが つくった つよい メカ」で手軽にドンパチができるところでした。北斗の拳な悪人どもをサイボーグライフルで一瞬で肉塊に変えるバウンサーや,あれよあれよというまにカーマイクル・バイオテッククラスタに侵入して研究データを引っ張ってくるネットランナーも見ていてわくわくしましたが,僕はもっぱらランドブラスターで少ない財産をやりくりしてホバークラフトの装甲を削ってガソリンエンジンをぶちこんで7.62mm機関銃を撃ちまくったり撃ちまくられたりしていました。

けれども,メタルヘッドのシステムに満足していたわけでは決してありませんでした。ランドブラスター的観点からすると,メタルヘッドのルールは100点にはほど遠い――とにかくマシンが壊れやすいのです。やたら多いクリティカル,ファンブル,隙間だらけの装甲,際限なく上昇するバウンサーの火力などなど,とうていバランスがいいとは言えないルールを前に,日々ハウスルールの考案に無駄な時間を使っていたものです。このへんは,メタルヘッド雑談所の書き込みからも全国共通の悩みといってよいかと思います。

d20版への期待

あれから15年。メタルヘッドのルールブックは本棚の隅で埃をかぶっていました。本当にメタルヘッドが好きで好きでしょうがない人あれば,山のようなハウスルールを片手に遊び続けるなり別のシステムに移植するなりしていたのでしょうが,僕はあいにくそこまでの熱意を持ち合わせてはいませんでした。ちょっとだけGURPS Vehiclesへのコンバートを考えたこともあったのですが,そもそもGURPSをほとんどやったことがなかったのですぐにあきらめてしまいました。

そんなときに飛び込んできたメタルヘッド/d20発売のニュース。D&Dなら遊び続けてそろそろ6年目,ルールもだいたい把握しています(といってもプレイ中にルールブックをひっくり返しまくる羽目になることもざらですが)。そもそもd20システムはリアリティとプレイアビリティのバランスが非常によいうえに,キャラメイクと戦闘に限って言えば恐ろしいほどに遊びがいのあるシステムです。ルールの記述もたいへん明確で,思わせぶりな説明ばかりで身のないメタルヘッド・マキシマムとは歴史がちげーんだよと言いたくなります。

そういう優れた既存コンポーネントの上にメタルヘッドのデータをうまく乗せれば,またみんなで荒野でバンディットの戦闘バギーを吹っ飛ばしたり雨のハイウェイでホバータンクをかっとばしてプレイヤーに悲鳴をあげさせたりできるに違いない。発売元もホビージャパンだし,D&Dスタッフが少しでも絡んでくれればそんなにおかしいものにはならないはず。そう思いながらメタルヘッド/d20のページを繰った僕を襲ったのは。…ああ,この人たちは車輪の再発明どころか,昔の車輪をそのまま使う気なんだ,という失望感でした。

これはd20システムではない

d20システムが登場したのは2000年。それ以来このシステムは世界中のあらゆるパブリッシャーとプレイヤーによって洗練され拡張され続けています。だからこそメタルヘッドも新版のプラットフォームとしてこのシステムを選んだに違いない。そう思った僕はいささか楽観的すぎたようです。この本を作った人たちは,d20のネームバリューを利用することだけを考えていたか,自分たちが20年近く前に作ったルールのほうが優れていると思い込んでいたか,あるいはその両方なのでしょう。d20という素晴らしい資産がどれほどないがしろにされているかは,すでに2chなどで情報が出ていますし,ここでも時間があれば解説をしていくつもりです。

ただ,d20を名乗るにはあまりにもおこがましいこのゲームが,実際のところどれだけ面白いかは僕にはまだわかりません。ざっと読んだだけでは旧版よりも面白いようにはとても思えませんが,遊んでみたらそんなに悪くなかった,ということにひょっとしたらなるかもしれません。「俺はd20なんかどうでもいい,俺の愛するメタルヘッドの進化を確かめたいんだ!」というみなさんは,僕の愚痴なんか聞き流してとっとと書店に走りやがれです。なにせお店によっては瞬殺だったようですから。