セレニカ~グラントリ (UCI/2.HC)

最難関となるクイーンステージはブロークンランド

とある駅前のファーストフード店にて

ちょっとしみじみした話です。とくに教訓とかはありません。

とある駅前のファーストフード店でハンバーガーをぱくついていたら,隣の席の会話が耳に入ってきました。スーツを着た若い男性が,A4にカラー印刷した資料を広げて,向かいに座った妙齢の女性になにやら説明しています。「ポテトはアメリカから輸入している関係上,輸送中にこのように圧力がかかってしまうことがありまして,その結果として…」横目で見ると,スーツの男性のシャツにはファーストフード店のロゴが刺繍されています。ということは本部の人間? ポテトの品質について資料を広げて説明しているということは,相手の女性は店長かなにかかな? などと思いながら耳をそばだてていたのですが。

女性はふつうのお客さんで,以前このお店に子供をつれてきたところ,子供が口に入れた食べ物に異物が入っていて,お店にクレームを入れたようです。すると本部から説明する人間がやってきて,このような状況になったらしいのです。しかしなんというかたいへん残念な展開で,

  • 若い男性が持ってきたフレンチフライの品質についての説明資料は,素直に読んでいくと「痛んでいる部分は見えるんだからよけて食べればいいだろう」としか言いようのないもの
  • しかしそもそも女性の子供が食べたのはマッシュポテトで,そのことが本部に伝わっていない
  • 子供はまだ小学校低学年とのことで,それから数日食欲がなくたいへん心配したとの母親の言葉に,若い男性は共感の意を示すだけでなんの現実的解決策も見出せず
  • 女性が「こういう場合の対応方法のマニュアルみたいなものはないんですか」と助け舟を出すも「私の知る限り返金して終わりですね」などとにべもない台詞
  • 「じゃあ一応この資料をいただいて帰りますね」といったところ「あ! すいませんこの資料は持って帰るように言われてるので…コピーのほうでよろしいですか? あ,でも白黒になっちゃいますけど大丈夫ですか」としどろもどろな対応(最終的にカラーコピーというものの存在に思い当たったが)

最初,ひょっとしたらこの女性はクレーマーの類なのかもとも思ったのですが,「安心して食事ができるようにしてほしい。またこの店に子供と一緒に来たい」と言っておられたのでそういうことではないようです。全体的に語り口も至ってまともでした。お店は返金もしたらしいのですが,それでも本部の人間が出張ってくる羽目になったということは,よっぽど店長の対応がひどかったのではないかと邪推してしまいます。そもそも,あきらかに経験不足の(クレーマー対応を自社店舗でやってしまうような!)若い男性を1人でよこすあたり,会社としての体質に問題があるような気がしてなりません。

きっとこの女性は,「全力で原因を究明し,再発防止に当たります。お子様にまたお店にきていただけるよう全力を尽くします」という言葉がほしかっただけではないかと思うのです。もちろん言葉だけでなく本当に原因究明ができればいいのですが,女性はあいにくと異物をわざわざ保管しておかなかったということだったので,手がかりなしでファーストフードチェーンに工程を見直せといってもそれは聞き入れられないでしょうし,それくらいは女性もわかっていたのではないでしょうか。しかし会社側のたいへん残念な対応によって,そのささやかな望みは叶えられないまま,また後日会社側から連絡するということでその日の話し合いは終わりました。

それにしても,こんなとき自分だったら,きっと「安い店だしまあしょうがねえよな」であきらめてしまったと思うのですが,「子供が安心して食事できるように」とがんばっていたお母さんは,ちょっと応援してあげたくなりました。世の中をよくするためにできること,見過ごさないように暮らしていけたらいいですね。

…説教臭くなってしまった。