セレニカ~グラントリ (UCI/2.HC)

最難関となるクイーンステージはブロークンランド

2年間乗ったFINISS MTBをいじってみた


SHINEWOODというブランド名でオリエンタル・スタンダード・ジャパン株式会社が輸入販売している1万8千円のMTBです。ディスクブレーキつきハードテイルがこの値段で売れるというのは一体どういう仕組みになっているのだろうと以前から気になっていたのですが,ひょんなことから友人が2年間通勤に使ったものをいじらせてもらうことになりました。

友人はネット通販で2年ごとに安い自転車を買って乗り継ぐという主義の人で,今回も「いまの自転車ボロボロだからじきに買い換えるんだわー」と言っていたので,いやもったいない直して乗ればいいじゃんていうか乗らなくてもいいからいじらせてと頼んでみたところOKが出まして,観察の機会に恵まれました。

通販で安物で整備なしと三拍子揃った自転車がどうなるか,まあだいたい想像はつくかと思いますが,いじってみて気づいた不具合を列挙してみたいと思います。

部品のグレードの低さに由来するもの

  • ブレーキが効かない

いくら機械式でもディスクブレーキなんだからそれなりに効くやろと思っていたのですが大間違いでした。安物ママチャリの前輪なみに効きません。ディスクブレーキというのはご存知のようにブレーキディスクをブレーキパッドで挟み込んで摩擦で止まるわけですが,この自転車についているものはディスクを挟む2枚のパッドのうち1枚しか動かないんですね。これでもたぶん最初のうちはそれなりに効いていたのかもしれませんが,パッドが減ってくるとディスクと動かないほうのパッドとの距離が大きくなってきて,動く方のパッドでディスクをぐいぐい曲げてやらないと動かない方のパッドに当たらないようになるわけです。これたぶん現状だとJIS規格(25 km/hで制動距離5.5 m以内)通らないです。もっともこの自転車で25 km/hも出そうとはとても思えなかったのですが…(後述)


それからブレーキレバーのほうもブラケットが樹脂製で強度が足りず,握ると変形していました。とにかくブレーキの効かなさだけとってもこの自転車はまったくおすすめできません。

  • フロントフォークがガタガタ

ブレーキを握ってハンドルを揺するとフォークのインナーパイプがガタガタ動きます。ダストシールの内側に隙間ができたり閉じたりするのでよくわかりますw

  • BBのガタ&リテーナ破損

ペダリングするとガタガタのBB軸からいやな感触が伝わってくるし,破損したリテーナがバキバキ言うしで,15km/h以上出す気にはとてもなれませんでした。BBを外してみたところ右ワンも左ワンも工具を延長しなくても回ったのでトルク不足も否めないのですが,決してゆるゆるではなかったのでまあ部品の問題かな,と。

洗浄して組み付けてみたところ,以前も安い自転車で同じ症状を見たことがあるのですが,左ワンを奥まで締め込んでもがちゃがちゃ動く状態でした。ねじ山の精度が適当なんですね。ロックリングで固定してみないと玉当たりの可否がわからないという。しばらく試行錯誤したのですがガタが出ないように組み付けるとわりと回転の渋いBBになってしまいました。つくづくカートリッジベアリング式は偉大だなあとあらためて思い知らされました。

BBシェルに水抜き穴が開いていないというのもサビを呼ぶ原因ではないかと。

リアディレイラーはいちおうシマノ製なんですが(型番RD-TZ50。ヤマハのバイクみたいだ)B軸にコンマ5mmぐらいのガタがありました。最初からなのか経年劣化なのかは不明ですが。

組み立てのいいかげんさに起因するもの

  • 前輪ハブナット緩み

フロントホイールがガタガタでした。この状態で乗ってたオーナーもすごいんですけど,そもそもここは緩んじゃだめですよね。まあそのおかげかフロントハブは無事だったのですけど。

  • リアハブ軸のねじ山つぶれ

たぶんハブナットが微妙に緩かったのだと思います。ねじ山がフレームにあったってつぶれていました。ロックナットを外すときに噛み込んだらどうしようとヒヤヒヤでしたがなんとか取れました。

  • スポークゆるゆる&折れ

引っ張られるほうだか押されるほうだか忘れましたがとにかく1本おきにスポークテンションがゆるゆるのものが混じってまして,そのせいかリアのフリー側が1本折れてました。ハブのフランジがやけに高いので249mmというえらい短いスポークが使われていて,黒スポークはちょっと高くつくかも。あと組み方が前後とも逆JISなのですがまあ言うほど問題じゃないですよねたぶん。

ええと,アウターから1cm以上は離れているような。

フロントのシフトレバーがフリクションなのはレバー自体の値段もさることながらインデックスでまともに動くように組み立てられないからじゃないでしょうか。

リム内幅20mmのところ18mmのテープが使われていまして,まっすぐ真ん中に取り付けてあればいいんですけど,ところどころうねってニップル穴の縁が見えそうになっていました。オーナーがほどほどの空気圧で乗っていたので問題にならなかったようです。

その他軽微な?問題

  • シフトレバー激重

インナーワイヤーが錆びていました。ケチってステンレス使ってないんですね。

  • シートポスト短すぎ

フレームサイズ(シートチューブ長芯芯)が43cmなんですが,シートポストが30cmなんですね。身長170cmぐらいまではギリギリ行けるかと思いますが,それを超えるとちょっと足りないです。まあこれはママチャリならよくあることですし足りなきゃ長いのを買えという話なので。

これもよくある話なんですがシートポストを抜き差しするたびに傷だらけになるので忍びないです。

この値段でスポークがステンレス製のわけがないので当然サビが出ます。幸いCRCを吹いてから触ったらどのニップルも動きましたが,がっつり固着していてもおかしくなかったです。

  • ヘッドベアリングのグリス切れ

感触でわかるほど錆びてはいませんでしたが開けたら真っ茶色でした。

  • チェーン伸び

いちおうたまに錆止めスプレーを吹いていたということなのですが,1%以上伸びていました。まあ2年ですから寿命ですよね。

意外にまともだったところ

  • タイヤ

CHAOYANGというロゴがついていて聞いたことないなあと思ったのですが,パターンはそこそこ転がりそうですし,カーカスが見えるまで使いたおしたのに2年間ノーパンクだったそうです。

  • 前後ハブ

しっかりグリスが入っていましたし,玉押しのダメージもよくあるレベルでした。

とにかくまあよくこれだけ見栄えのする安い部品を集めてきたなあというのが最初の感想です。クランクは一見アルミのような太さですが鉄製ですし,ハンドルバーも31.8mmなのですがこれで鉄製ですからね。

ステム側のクランプボルトはちゃんと4本あるのでダウンヒルで外れたりはしないと思いますが…(https://youtu.be/wkMnk_eCDQU?t=155)。
ヘッドチューブも一見テーパードなのが笑えるといいますかこれを買う人はヘッドがテーパードかどうかなんてこれっぽっちも気にしないと思います。

とにかく致命的にまずいのがブレーキで,こまめにクリアランスを調整してやるのもいいのですが,それが面倒ならシマノのいちばん安い油圧にしてしまうのがいいのではないかと思います。最近出た最廉価グレードのBR-M315がもうじき国内でも出回るのではないでしょうか。レバーとキャリパーとホースで1万円前後ではないかと。

SHINEWOODのFINISS
18,000円位でディスクブレーキ搭載だし、格好いいので案外いいのではないかと思います。

2~3万円で買えるMTBについて・安くておすすめのMTB | スープdeスパンク

そう思いますよねー。実は安物のVブレーキのほうがよっぽど効くという。