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自転車押し歩き推進区間とかいうアホなものができたのは市が県の公安委員会と仲が悪いからじゃないか

福岡市の話です。今年の4月に施行された条例で,市が「自転車押し歩き推進区間」というものを指定できるようになりまして,渡辺通りとかいう大きな通りの西側歩道がそれに指定され,押し歩きを推進するためにものすごいリソースが投入されています。

そこまでするんだったら歩道を自転車通行可にしなけりゃいいじゃんと思うんですが,どこを自転車通行可にするかを決めているのは県の公安委員会で,市はそこと話し合ってどうこうということはしたくないみたいなんですよね。

まず,福岡市がここ数年いろいろ検討してきたことが下記ページからわかります。

で,2010〜2011年に何度か開催された「福岡市自転車安全利用のあり方検討会」,こちらのほうは全体としてまともなことを言っているのですが,その後2012年に開催された「福岡市自転車の安全利用に関する条例検討委員会」であやしいことになっています。「条例検討委員会(参考:http://www.city.fukuoka.lg.jp/shimin/seikatsuanzen/shisei/jitensyajorei.html)」はぜんぶで5回開かれているのですが,第2回で事務局が条例のたたき台を提示しています。議事録から抜粋します。

●委員
私もこの規定にはこれが一番いいと思いますけども、ただですね、歩道通行可ということで、禁止されているところを許可してるんですよね。そこをまた禁止するわけでしょう、法文上はですね。ですから道交法との絡みでどういういうふうになるのか。一応禁止されているところを自転車も通っていいですよというふうに許可しているわけですから。それをまた、「ここは押してください、歩行者になりなさい」こういうふうに指定するわけですから、非常に何かごちゃごちゃした、難しいものがあるので、それをきちんとクリアしておかんといけないんじゃないかというふうに思います。

ほうほう,ごもっとも。

●委員長
くわえタバコも道交法には規定がないんですよね。くわえタバコ、言ってみればタバコ吸いながら道路を歩くのを道路交通法は禁止はしてない。というところを、福岡市は区間を限って、歩きながらタバコを吸ってはいけないという禁止をしている。これには罰金を、罰金ですかね、過料かもわかりませんがつけているというこういう例がございます。また暴走族条例などはギャラリー対策をやってる県がありますよね。これは暴走族をはやし立てる、そこ以外では歩道で拍手しようが、頑張れと言おうが道路交通法はこれを規制するものでありません。道路交通法上は許されている行為ですけれども、その当該県におきましては、暴走族をはやし立てるように拍手してはいけないと、声援を送ってはいけないと、声を出してはいけないんですね、こういう禁止をしている。これは適法だろうというふうに思われているところです。ですので道交法で許されていることを条例で禁止するということが、もう一律できないというわけではありません。

は,はあ。でも自転車の歩道通行可のように明示的に許可されている行為と,くわえタバコや暴走族ギャラリーのようにそもそも言及のない行為を同列に見ていいんですかね?

それだけの状況がそろってるかどうかですが、ただこの問題で一番難しいのは、道交法では自転車は通行可という判断を公安委員会がなされているという状況が違うんですよね。これがあってそれを覆すということですから、でもこれもどちらが優先するんだという話にさかのぼらなければならない話で、警察の方と考え方が違うかもしれませんけれども、地域の、その歩道上の安全を守るのは全国組織に端をする警察なのか、あるいは福岡市、地元の自治体なのかというそこの役割分担の話にまでさかのぼらないとなかなか議論が進まないところがありまして、一概には言えないというふうに思います。道路交通法の集団行使の規制に対して徳島市の、昔の市町村警察の時代の条例が道交法の規制だけでは緩やか過ぎると。もっと厳しい規制をというので主宰者、デモ行進の主宰者なども罰した、そういう条例で最高裁判所は、これは地域の状況による道路交通の状況は異なるものだから条例でもって道路に関する規制を適切に書いてもよいという、こういう判断もなされています。これも考え方として一般的なものでこのケースに当てはまるかどうかはわかりませんけれども、結論としてはこちらの検討委員会の意向だろうと思います。そうするんだというのがこの検討委員会の意向であれば、それに関する理論武装をしていくという可能性は残っているのではないかと思います。

理論武装ときました。続いて第3回。

●委員長
押し歩き推進区間の話にも広がりましたが、これはいわゆる努力規定に、前回から見ると格下げになっていますよね。この辺の経緯は何かご説明ありますか。
●事務局
当初は右側に記載していますように、自転車を押して歩かなければならないという義務づけになっておりまして、ここが唯一義務づけされているところでございました。しかし、前回もご意見がありましたように、道交法というのがございまして、具体的に押し歩き区間で想定されるのは渡辺通りということで、あそこは道交法に基づいて自転車通行可となっております。その上に、条例をもちまして、押して歩かなければならないという規定については、法的な面から構成的に問題あるんじゃないかということで、努力規定というふうにさせていただいたところでございます。

問題があるんならいっそ規定とかやめちゃえばいいのにと思いますが。

●委員
ちょっと補足的に説明しますと、「市長は」となっていたんですね。中身がもう交通規制の話、規制権限に及んでしまったものですから、もう道交法ではこれは公安委員会、警察署長、公安委員会の規制になるんで、それに抵触するんではないかということがあったんです。要は、その押し歩き区間に対して、今、自転車は通っていいですよとなっています。その規制を取ることが、だめと言っているわけじゃないんです。場合によっては公安委員会の権限でその規制を取ると、自転車は通行できないとする道はまだ残っています。ただ自転車が通らないようにするには、どこを走らせるのか、歩かせて行くのかというのがあるので、条例の中で一律に決めるのではなくて、渡辺通りも一つの対策としては別に考えるべきではないかなという風に思います。そういった法律でどうしてもクリアできないところがありましたので、条例ではこういう表現でということでお願いをしている。

そのお願いのためにどれだけの労力が費やされ,どれだけの自転車ユーザーが理不尽な思いをしていることか。

●委員長
はい、この点は、私は違う解釈の仕方も考えられる可能性があるのではないかと。ただ、公安委員会が道交法の規定に基づいて、そこを通行可としているという点が結構ネックだなという風にですね、抵触しますので、権限が正面からぶつかりますのでね、公安委員会がとにかくもうここは通行可能なんだと言えばこっちと衝突しますよね。それでも福岡市の道路、天神というまちをどういうふうにするのか。それに関しても市長は権限があるので、どっちが優先するという競合はあり得ると思うんですね。そこで理屈を考える可能性は有り得るというふうに僕は考えていたわけですが。ただ冒頭で申しましたように、やっぱり安全利用ですから、道交法の域をあまり出てないですよね。まちづくりをどうするというのではなくて、自転車の安全、やっぱり安全に関しての条例であれば道交法に正面から喧嘩を挑むというのは、ちょっと厳しいかなという印象もございます。
それはともかくとして、この条例は協力関係を軸としてできあがると思いますから、警察の正式の見解というものは、ある程度重く受け取らなければいけないのではないかと思います。

「権限が正面からぶつかる」「道交法に正面から喧嘩を挑むというのは厳しい」いやだから警察との「協力関係を軸として」条例を作ってくださいよ。なんでそれができないのですか。

●委員
念のためお聞きしますけど、押し歩き推進区間は歩道で、自転車で車道を走る分はいいんですか。
●委員
自転車を押して歩きなさいといったら、車道の左端を乗って走りますと言われたら、それはそれでいいですね。

まあ結論はみんな車道を走ろうよ,なんですが。

ほんと,自転車通行可の指定を取り消すだけですむ話がなんでこんな大事になっているのか,情けないことです。